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【おうちで中川一政美術館】vol.1中川一政「駒ヶ岳」(1982年)

2020.4.21

 現在、真鶴町立中川一政美術館は、新型コロナウイルス感染症予防対策のため当面の間休館させていただいております。開催中の展覧会「中川一政のことばと創作-詠み、書き、描く-」も中断を余儀なくされておりますが、臨時休館期間中、ご自宅でも中川一政画伯の芸術世界を楽しんでいただけるよう、当館イチオシの所蔵作品を紹介していきます。

 

 第1回目は、中川一政作《駒ヶ岳》(制作年:1982年、油彩/キャンバス、サイズ:130.3×162.1cm)をご紹介します。

 

 本作は、中川画伯が89歳の時に描き上げた100号の大作です。
 画面全体に油絵具を何層にも塗り重ね、激しい筆致で描かれています。油絵具は、緑と茶系のものが多く用いられていますが、近づいて見てみると、白やオレンジ、青や紫などの絵の具も使われていることがわかります。
 小学生の鑑賞授業でも本作を紹介する機会が多いのですが、この絵を見た子どもたちからは、「ごつごつしている」「絵の具がキラキラしていて綺麗」「迫力がある」といった感想をもらいます。《駒ヶ岳》は、子どもたちにとっても大変興味深い作品のようです。

 

 100号の《駒ヶ岳》は、中川画伯が生涯を通して描いた油絵の中で最も大きなサイズの作品です。画伯は、70代半ばに箱根を写生地に定めます。真鶴のアトリエから秘書の運転する車で箱根に出かけ雄大な大自然の中で制作に打ち込み、約16年に渡り《駒ヶ岳》の連作を描き続けました。画伯自身が手応えを感じるまで筆を加え続けた作品が多く残っており、完成までに2~3年を要したものもあるとのこと。
 その中でも本作は《駒ヶ岳》の仕事の終盤期に描かれたもので、画伯の風景画シリーズにおいても最晩年の作品に位置づけられています。また、この作品には画伯が追究した「ムーヴマン」(自身の心の感動や躍動)を描くことが体現されており、90歳を目前に描かれたとは思えないほど、生き生きと力強い印象を感じます。

 

 なお、本作は昨年度の当館第2回テーマ展示「中川一政美術館名品展 あなたが選ぶこの一点!」の会期中(2019年9月14日~12月3日)に行われた投票企画「あなたが選ぶこの一点!」にて、得票総数1086票のうちから163票を獲得し、第1位に選ばれた作品です。

 

 当館では本作を含め、合計6点の《駒ヶ岳》を所蔵しています。《駒ヶ岳》を楽しみに当館にお越しになるお客様も多いことから、作品を入れ替えながら年間を通して《駒ヶ岳》を展覧し、鑑賞の機会を提供しています。

 

(真鶴町立中川一政美術館 学芸員 加藤志帆)